無形資産とIFRS

無形資産の認識や測定、会計基準が与える影響

国際財務報告基準(IFRS)における無形資産の定義、認識、測定、
地域別の無形資産比率とともに会計基準が無形資産残高に与える影響をご紹介します。

国際財務報告基準 / International Financial Reporting Standards



国際会計基準IAS(International Accounting Standards)第38号「無形資産」によると、無形資産は、「物理的実体のない識別可能な非貨幣性資産」と定義されています。

無形資産(例):
ソフトウェア、特許、著作権、映画フィルム、モーゲージ・サービス権、漁業免許、顧客名簿など

無形資産の認識

識別可能性:
①分離可能であること、もしくは、②契約その他の法的な権利に起因するものであること

当初認識:
①資産に起因する、期待される将来の経済的便益が流入する可能性が高い、かつ、②当該資産の取得原価が信頼性をもって測定できる

取引形態:
①個別の取得、②企業結合に伴う取得、③内部創出、④交換など

内部創出:
研究局面は発生時の費用、開発局面は追加的な6要件を全て満たす場合は無形資産、そうでない場合は発生時の費用

開発費の資産化要件:
①無形資産を完成させるために技術的に実現可能である
②完成させ、使用または売却する意図がある
③使用・売却する能力がある
④将来の経済的便益を創出する可能性が高い
⑤技術上、財務上、その他の資源が十分である
⑥支出を信頼性をもって測定する能力がある

認識できない項目:
①ブランド、②ロゴ、③顧客名簿、④類似する項目など

無形資産の測定

取得原価:
支払った現金又は現金同等物の金額、取得時又は生産時の資産の取得対価の公正価値又は当初認識した資産に配分された金額

当初測定:
①個別の取得:取得に要する支払額、②企業結合に伴う取得:取得日現在の公正価値、③内部創出:認識要件を最初に満たした日以降の支出額

事後測定:
原価モデル :取得原価 ー 減価償却累計額/減損損失累計額
再評価モデル:再評価日現在の公正価値 ー 減価償却累計額/減損損失累計額

償却と減損:
償却資産 :耐用年数で規則的に償却(経済的便益の費消パターンを反映する方法、信頼性をもって決定できない場合は定額法)、減損の兆候で減損テスト
非償却資産:年1回減損テスト、減損の兆候で減損テスト

認識の中止:
①処分した時、②将来の経済的便益が期待できなくなった時

地域別の無形資産比率

日本経済新聞は、日米欧の主要企業約1200社(金融除く)の総資産における無形固定資産の比率が高い企業を調査しています。

米国や欧州は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めており、ソフトウェアやM&Aで生じたのれんの影響で無形資産比率が高くなっています。

一方で、日本は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が欧米に比べて遅れており、M&Aの規模も小さく、さらに、日本会計基準の処理によってのれんが小さくなるため、無形資産比率が低くなっています。

会計基準による無形資産への影響

会計基準によって無形資産残高が増減します。

● 日本基準は原則として研究開発費は費用処理となりますが、IFRSでは開発費の資産化により無形資産残高が増加

● 日本基準はのれんは一定の期間で償却しますが、IFRSではのれんの償却は行わないため無形資産残高が増加

● 日本基準はのれんの減損の兆候がある場合にのみ減損の要否の判断を行いますが、IFRSでは毎期のれんの減損テストを実施するため無形資産残高が減少



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