AI関連発明の出願状況

AIコア発明とAI適用発明の出願件数の推移

2020年7月に特許庁から公表された「AI関連発明の出願状況調査 報告書」から
人工知能(AI)の出願状況を一部抜粋してご紹介します。

人工知能 / Artificial Intelligence



当該調査におけるAIの定義は、下記の通りです。

① AIコア発明:
ニューラルネットワーク、深層学習、サポートベクタマシン、強化学習等を含む各種機械学習技術のほか、知識ベースモデルやファジィ論理など、AIの基礎となる数学的又は統計的な情報処理技術に特徴を有する発明(付与されるFI2は主にG06N3)

② AI適用発明:
画像処理、音声処理、自然言語処理、機器制御・ロボティクス、診断・検知・予測・最適化システム等の各種技術に、①のAIコア発明を適用したことに特徴を有する発明(付与が想定されるFIは多数)

AI関連発明の国内出願件数の推移

AI関連発明は2014年以降急激に増加しており、2018年は約4,700件となっています。

AI関連発明は、いわゆる第二次AIブームの影響により、1990年代前半に一度出願ブームといえる状況が発生しましたが、その後20年近く出願件数は低調に推移していました。第二次AIブームにて流行したのは、知識ベースモデル、エキスパートシステム等の技術ですが、事前にあらゆる事象のルールをコンピュータに教え込むことの難しさから、ブームは終焉を迎えました。また、古くからあるニューラルネットも当時盛んに研究されていましたが、性能の限界が生じ、こちらもブームは一時的なものでした。

2014年以降の出願増は、いわゆる第三次AIブームの影響と考えられ、その主役はニューラルネットを含む機械学習技術です(中でも深層学習技術が主要な地位を占めます)。第三次AIブームが生じた要因は、機械学習における過学習を抑制する手法の開発や、計算機の性能向上とデータ流通量の増加によって、AI関連の理論の実用化が可能になったことであるといわれています。例えば、深層学習の肝である、ニューラルネットの多層化という発想自体は数十年前からありましたが、莫大な計算コストが問題となり、これまで研究が進んでいませんでした。しかし2012年にカナダのトロント大学のチームが、世界的な画像認識のコンテスト「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Competition)」において深層学習を使って圧勝したことが一つの契機となり、今に至る第三次AIブームが生じています。

AI関連発明の主分類構成の推移

AI関連発明の適用先の動向を探るため、AI関連発明全体の主分類が調査されています。

G06N以外で付与される主分類としては、従前からG06T(画像処理技術)及びG06F16/(情報検索・推薦;FI改正前のG06F17/30を含む。)が特に多いことが示されています。

このほか主分類として上位を占めるG06Q(ビジネス;FI改正前のG06F17/60を含む。)、A61B(医学診断)、G05B(制御系・調整系一般)、G01N(材料分析)、G10L(音声処理)、G06F17/20-28(自然言語処理、機械翻訳)等も、AIの主要な適用先といえます。

なお、G06Fその他(情報一般)の規模感も大きく、ここにはG06F3/(インターフェイス)やG06F21/(セキュリティ)といった、AIの主要な適用先が含まれています。

出願人動向

AI関連発明について、近年の出願件数が上位の出願人を示されています。

対象は出願年が2014年以降であり、かつ2020年4月までに特許公報等が発行された出願です。

国内出願が対象のため、日本企業が上位を占めていますが、外国企業もいくつか目立ちます。

各国の出願状況

IPCとしてG06Nが付与されている五庁及びPCTの出願件数の推移が示されています。

日本国内の状況と同じく、各国にてAI関連技術の出願が増加傾向にあることが分かります。

出願件数は米国と中国が突出しており、両者が世界において主要な出願先となっています。日本においても今後、AIを活用したイノベーションのさらなる創出が期待されます。



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